第17章 後悔させてやるのだよ
「“僕に逆らう奴は、親でも殺す”・・・だろ?」
「話が早くて助かるよ、真太郎。今日はもうここまでだ」
帰って構わない、そう言いオレに背を向ける赤司に声をかける。
「赤司、」
オレは左手を力任せに握り、振りかぶった。
そしてそれは赤司の右頬にクリーンヒットしたのだ。
「・・・ふっ、やはり痛いな」
殴られた右頬を抑えながら、赤司は鼻で笑った。
殴られることを察し、避けることもできたはずなのに、全部分かっていた上でそれをしなかった赤司。
あぁ、そうだ。
いつだってオレはあいつに手の内を見透かされているのだ。
オレが殴ることも、花子が好きなことも。
そしてこの勝負を受け入れるしかないことも。
それでもこんな所で身を引ける程、オレは大人じゃない。
「後悔させてやるのだよ。オレたちにチャンスを与えたことをな」
こっちだって試合に負けるつもりはないし、花子を譲るつりもない。
「面白いじゃないか。楽しみにしているよ。まぁこの世は勝利が全てだ。せいぜい負け犬の遠吠えにならぬよう、“人事を尽くせ”よ」
その後オレはもう一度先程と同様に赤司を殴ってから帰路についた。
赤司も殴られることを分かっていながら、これまた先程と同様にオレの拳を受け入れた。
(「1発目はオレの分で、」)
(「・・・・・。」)
(「2発目は花子の分だ。」)