第10章 ただの幼なじみ
私はこの話題が苦手だし、この話をしているときの真ちゃんもあまり好きじゃない。
バスケが強すぎるとこでそれなりに辛い思いをしていることも知ってはいるが、キセキのみんなのその気持ちはきっと凡人の私には分からないのかもしれない。
「オマエらマジごちゃごちゃ考え過ぎなんじゃねーの?楽しいからやってるに決まってんだろ、バスケ。」
「何も知らないくせに、知ったようなことを」
そのタイミングで高尾のひっくり返したお好み焼きが真ちゃんの頭の上に乗っかった。
「とりあえず、その話は後だ。」
そして真ちゃんは高尾を無理矢理引きづりながら外に出た。
「あんな堅物といて、オマエも大変だな。」
ひたすらお好み焼きを食べながら私に話かける火神くん。
『本当、毎日毎日先輩に頭下げてるよ、私』
全く、こっちの身にもなって欲しいものだ、とも思う。でもそんな毎日もそれ程嫌ではないのもまた事実だった。
そして今日の試合を見て分かったこともあった。
『あんなこと言ってるけど、真ちゃんバスケ好きなんだと思う。じゃなかったらあんなに上手くならないよね?』
そう問いかけると黒子くんは笑ってくれた。
「僕もそう思います。」
その後すぐ真ちゃんがお店に戻ってきた。
真ちゃんは机に千円札を3枚置き、私の腕を引っ張る。
・・・今日はよく腕を引っ張られるな、そう思いながらついて行くと黒子くんに呼び止められる。
「緑間くん、またやりましょう!」
「あたりまえだ、次は勝つ」
なんだかそのときの真ちゃんはすごく清々しそうな顔をしていて、私は嬉しくなった。3人に手を振り、店を出るとチャリアカーで漕ぐ準備万端の高尾がいた。
「今日はジャンケンなしでもいーぜ?その代わり、オマエのそのラッキーアイテム、」
「あぁ、次からはぬからないのだよ。今度はもっと大きい信楽焼を買うのだから」
「サイズの話じゃねぇよっ!」
『あははははっ』
試合に負けたはずなのに、心は今までにないくらい軽く、明るかった。
その日は誠凛戦を振り返りながら帰った。
(「正直ビビったのだよ」)
(「ビビってないのだよ」)
(「顔の横を通ったのだよ」)
(「高尾!」)
(「もう少しで当たるところだったのだよ」)
(「マネをするなーっ!」)
(『あははははっ!』)