第48章 カッコわりぃとこ見せてんじゃねぇぞ
「知らないから興味があるというだけだ。それ以上の意味はないよ。」
『だーかーらー、それが嫌味なんだってば!もうっ!』
「ならばいずれオレが教えてやるよ。」
『真ちゃんと赤司が別のチームで対戦したらどっちが勝つんだろう?』
「「オレに決まっているだろう」」
私の問いに、二人同時に声を揃えて応えるもんだから思わず笑ってしまった。本当のことを言えば、私たち幼なじみ3人は高校も大学も同じところへ行き、ずっと一緒にバスケをすると信じて疑わなかった。
だから真ちゃんと赤司が戦うなんて、微塵も想像がつかなかったのだ。
「まぁ、もしオマエと戦うことになれば、流石に手加減はできなそうだ。負ける気は毛頭ないがな。」
「・・・。」
「ところで緑間、」
「うるさい、投了なのだよ。」
『また真ちゃんの負けか〜。赤司、次私とね!』
あの頃の何気ない会話を思い出し、ほんの少しだけ不安になった。隣にいる真ちゃんは、その将棋の駒を暫く見つめるとソレを私へと差し出してきた。
「花子、オマエが持ってろ。」
私はその駒を受け取り、制服のポケットにしっかりとしまった。そんな私たちのやりとりを見て、「あっちぃな〜、爆発すればいいのに。」と暴言を吐く宮地さんに別れました、と言うのはまた今度にしようと思った。
「んで、今日は何位?」
「2位ですが。」
「なんだそりゃ!1位取ってこいよ・・・埋めんぞ。」
「いや、占いなんで。」
相変わらず暴言の多い宮地さんと真ちゃんのやり取りに、高尾はお腹を抱えて笑う。そんな私たちのやり取りを一通り見た監督は2回目の大きなため息を吐いた。
そして大坪さんの後に続いて会場へと足を運んだ。準決ともなると客席は超満員。ベンチに入れなかった他の部員たちも沢山いた。“不撓不屈”そう書かれた秀徳の弾幕を目によく焼き付ける。
「素敵な弾幕だな。」
振り向かなくても分かる、その声の正体は本日の相手。赤司だ。そして声色で、それがもう1人の赤司だと言うことももちろん分かった。
「花子は渡さないのだよ。」
「“僕”に勝つつもりでいるのか。それは楽しみだ。」
そう涼しい顔をして言い放った赤司は自分たちのベンチへと戻って行った。