第43章 ヘマすんなよ
「・・・遅い。」
案の定、買出しに出かけた花子の帰りは予想通り遅かった。
高尾には過保護すぎると指摘されたが、心配になり何度か携帯に電話してみたが、花子が出ることは一度もなかった。
・・・なんの為の携帯だ?
と募らせた苛立ちを落ち着かせるために、体育館の入口で花子の帰りを待っている。
そんな時だった。
見覚えのあり過ぎる赤髪のオトコと花子がニコニコと楽しそうにこちらに向かって歩いてくるのだ。
何故赤司と一緒にいるのか、と考えるよりも先に身体が勝手に動いた。
「おい、花子っ!!何しているのだよ!」
『あ、真ちゃん。』
急いで駆け寄り花子の細い手首を掴み、強引に自分の方へ引き寄せ、赤司から距離を取る。
帰ってくるのが遅かったこと、電話が繋がらなかったこと、それから赤司と一緒にいたということ。オレの心配や苛立ちといった感情たちは、きっと3分の1も花子には伝わっていないのだろう。
その証拠に、気の抜けたような顔でこう言う。
『どうしたの?そんなに慌てて、』
隙だらけすぎる彼女を叱りたい気持ちももちろんあったが、今はそれよりも何よりも赤司と話す方が最優先だろう。零れ落ちそうになるため息を飲み込んだ。
「そんな怖い顔しないでくれよ、真太郎。僕は何もしていない。偶然変なオトコに絡まれている花子と会って、そいつらを追い払っただけだ。」
確かめるように花子の顔を覗けば、首が取れそうな程に首を縦に振る。
「そんなに気に食わないなら、オマエが着いて行ってやれば良かっただろう。・・・まぁいい。僕はこれで失礼するよ。」
赤司はそう言いながら、持っていた荷物を花子に返していた。ここからは予測だが、花子が買った荷物を道中は代わりに赤司が持っていたのだろう。
スマートで優しいそんな赤司はどこか柔らかく見えて、一瞬だが昔の赤司に戻ったようなそんな気がした。だからオレはわざと口を開いたのかもしれない。
「・・・ヘマすんなよ。」
その声を聞いた赤司は、やはりいつも通りの赤司だった。
(「絶対は僕だ。」)