第41章 オマエの隣にだって
「な、なんなのだよっ!!」
さつきと仲良く女子トークに花を咲かせていると、離れたところから真ちゃんの大きな声が聞こえてきた。
「今のって、」
『真ちゃんだと思う。』
何かあったのかもしれないと思い、さつきと共に急いでチャリアカーの近くにいる真ちゃんのところへ向かう。真ちゃんはチャリアカーの中を覗いていた。
『真ちゃん、どうしたの?・・っあ!2号だ!』
「2号だかなんだか知らないが、その犬。オレのリアカーに小便しているのだよっ!」
なんだ、そんなことかと肩を撫で下ろしたのもつかの間で、2号を抱きかかえたところで飼い主の黒子くんと談笑している黄瀬くんがやってきた。
「すいません、それうちの犬です。」
腕の中にいた2号はちゃんと飼い主が誰だか分かっているようでピョンと軽く黒子くんの元へ跳んで行った。
「あ、桃っちと花子っち一緒だったんスね。」
『そうなの、さっきまでベンチで話してたんだよね。』
「何の話してたんスか?」
黄瀬くんの質問に、さつきと一度目を合わせてから答えた。
「『ひみつー!』」
「うわ、気になるじゃないっスか〜。」
「何だか中学生の頃に戻ったみたいですね。」
「それに私たち4人同じクラスだったよね、2年のとき。」
担任の先生がカツラだったとか、誰と誰が付き合っていたとか、そんな取るに足らない話をして盛り上がった。
最初こそ真ちゃんは面白くなさそうに聞いていたが、コロコロと話題が変わっていくうちに口数も増えていった。そして結局行き着くのは、バスケの話だ。
『またみんなでバスケやりたいね。』
思わず漏れてしまった本音に、肯定的な返事をしてくれたのは黒子くんだけだった。それに対して真ちゃんも黄瀬くんもさつきも何も言わなかった。
それがどういう意味なのか、今となれば私にも理解はできるし、他のキセキのメンバーがそれを望んでいないことも分かっているつもりだ。でもやっぱり、またみんなで楽しくバスケをして欲しいと心の奥底のどこかで私は願っているのだ。
「あ!見つけた。そろそろ帰ろうぜー」
手を振りながら走ってきた高尾によって少し重たくなった空気が途切れた。そして私たちは何となくあいさつを交わし、ウィンターカップで会うことを約束した。