第33章 赤司が大きくなったんだよ
「乗れよ?」
『いやいや、大丈夫。歩けるから。』
「左足まだ痛いんだろ?ほら、早く乗れよ。」
どれくらい赤司と裏山にいただろうか。
そんなに長い時間ではなかったが泣いて少しスッキリとした。
そして家に帰ろうと立ち上がると、赤司は目の前で屈んで背中に乗れと言うのだ。確かにまだ左足は痛い。けれど歩けないほどではない。
これが目の前にいるのが真ちゃんだったら迷うことなく背中に飛び込むだろう。それが赤司となると理由はないが少し気恥ずかしくなってしまうのだ。
しかしもう一度赤司にほら早く、と語気を強めて言われてしまえば、私はその背中に飛び込むしかない。
『ねぇ、重くない?』
「そんなことないさ、むしろ軽いくらいだ。」
『ぷっ、やっぱりねぇー。』
赤司の返事を聞いて思わず吹き出して笑ってしまう。
「なんだ?何が面白いんだ?」
石堤の階段を降りながら何も分からない赤司に問いかけられる。私は昨日の夜の話をした。真ちゃんに重いと言われたこと、赤司ならそんなことないと言ってくれると話したこと。
「緑間はそんな酷いことを言ったのか?」
『そうだよ?失礼でしょ?』
赤司からもなんか言ってよ、と付け足すと、首を捻り赤司は立ち止まった。
「いや、オレは逆でさ、」
『ん?』
「花子が少し小さくなった気がしたんだが、気のせいか?」
『赤司ってたまにおバカさんだよね?私が小さくなったんじゃなくて、赤司が大きくなったんだよ。』
私が笑うとあぁそうか、と赤司も笑い再び歩き始めた。帰路は試合の話に花を咲かせ、気が付けばすっかり家の前まで来ていた。
玄関の前には腕を組み壁に持たれかかりながらこちらを睨みつける真ちゃんがいた。
「今何時だと思ってる?」
『9時半です。』
赤司の背中から降り、ごめんなさいと深々く頭を下げる。
「緑間、無事だったんだ。そう怒ってやるな。」
「いつもいつも赤司は甘いのだよ。」
『・・・ごめんなさい。』
このあとみっちり真ちゃんに説教をされたのは言うまでもない。
(「オマエ反省してるのか?」)
(『してます、ごめんなさい』)
(「明日からのトレーニング覚悟しろよ」)
(『えーそんなー』)
(「花子、オレも付き合うさ」)