第28章 すぐ終わらせるって言っただろ?
「待たせたな、緑間。」
「全くだ。」
「あ?」
「本当のことだろう。」
「いい加減にしてください。早く行きましょう。」
真ちゃんと火神くんはほんとに会う度言い合いをしている。見ているこっちは毎度のことすぎて呆れてしまうほどだ。
がんを飛ばし合う2人の間に割って入ったのは黒子くんだ。
そのまま少し4人で歩くと、コートのある公園に着いた。ここは以前インターハイの東京都予選の前日、機嫌の悪かった真ちゃんと来たところだった。
「10本勝負でどうだ、緑間。」
「すぐ終わらせてやるのだよ。」
『明日も練習あるんだから、程々にしてよね。』
「火神くんもあまりムキにならないで下さい。」
真ちゃんと火神くんが注意をきちんと守るとは思えないが、私たちはベンチに座った。
『仲が良いんだか悪いんだか分からないよね。』
「全くです。」
ダムダムとボールの響く音を聞きながら、すっかり暗くなった公園で黒子くんと目が合うと、彼は話しにくそうに口を開いた。
「・・赤司くんと会いましたか?」
『へ?な、なんで?』
急に出た赤司の名前に少し動揺してしまった。きっと人間観察が得意な黒子くんを前に嘘はつけないだろう。
「マジバで山田さんの話を聞いたとき、不本意にキスされた相手って赤司くんかなって思ったんです。」
『・・・・・。』
「やっぱり、そうだったんですね。」
黙っていることが答えとなり、黒子くんは何か聞きたそうな顔を私に向けてきた。それが何なのか何となく予想ができた。
『あれは、赤司じゃなくて、みんなの言うもう1人の赤司だったと思う。』
「付き合いの長い山田さんがそう思うんですから、やっぱり赤司くんの中には違う赤司くんがいる。そういうことですよね。」
『うん。昔の赤司はもっと優しくて、もっと明るい人だったよ。いつか、昔の赤司に戻る日が来ればいいな。』
「大丈夫です、きっと。また昔の赤司くんに戻ります。」
そうするつもりで僕たちは練習してますから、と黒子くんはコートの方を見て笑った。