第27章 オマエのが綺麗だよ
「・・・オマエら、花火見る気ないだろ。」
「『え?』」
昨日のあの話はなんだったんだ?と思わせるほどに花子と高尾は並んでいる屋台を見て何を食べるかという会話を繰り広げていた。
正直、花火大会なんて人多いし、暑いし、面倒臭い極みでしかなかったが、花子が行きたいと楽しそうに言えば、そりゃどこであろうと選択肢は行くしかないのだ。
それでも、1つ。
今日来て良かったと思ったことがあった。それは、花子が浴衣を着ているということだ。
普段は肩にかかるくらいまである髪を結わない花子が、お団子にしていて白い首筋がよく見えた。
紺色の生地に薄いピンクの花が散らばる浴衣の効果もあり、いつもより少し大人っぽく感じ、艶やかさを感じた。
・・・控えめに言って、どストライクだ。
なんて絶対本人には言ってやらないが。
『真ちゃんは何食べる?』
「オレはいらないのだよ。」
既に花子の右手にはあんず飴があり、高尾に至ってはりんご飴やら焼きそばやらいろいろぶら下げていた。
人混みをかき分け目的地へと高尾を先頭に歩き始める。
「ちゃんと着いてこいよー。」
「花子。・・手、離すなよ」
『う、うん・・・。』
普段もっと恥ずかしいことをしているというのに、手を繋いだだけで顔を赤らめる花子。
「迷子になったら困るから。」
なんてのは体のいい方便で、本当は周りの男共にこいつはオレのだっていう独占欲からの行動な訳で。
きっと、そんなことを微塵も感じていないであろう花子は、カランカランと下駄の音を鳴らしながら着いてくるのだった。