第5章 岸優太の憂鬱
リーダーに選ばれてから、
岸くんは無駄な力が入るように
なったと思う。
でも、上手くガス抜きする事を
知らない彼は、がむしゃらに頑張る。
いつもいつも、真面目で真剣だった。
そんな岸くんは、
“自分はアルファじゃない”
なんて思ってる。
そんなの、自分の勝手な
思い込みなのに。
踊っている時、自分がどんな
表情をしているのか、
歌っている時のその声が、
どれだけの人を響かせる力があるのか。
……本当の自分を、
岸くんは知らないだけなんだよ。
「……勝瀬さん、撮影終わってから
俺もまたさっきの現場戻っていいですか?」
運転席のマネさんに問う。
「岸くんのところ? 全然いいよ」
「俺も行きます。廉と海人は夜まで
かかるだろうから」
神宮寺のこういうところ、
本当に頼りになる。
二人目が合えば、神宮寺は
“大丈夫だから”なんて
視線で応えてくれた。