第4章 疑惑
20分後、蒲田さんは
汗だくで私の車の窓を
叩いてくれた。
彼の手にあったのは、
私がいつも打っているのとは
違う色の特効薬。
……オメガの発情を
極限まで抑え込む薬だった。
「これ持ってきたから、打って」
「……あ、すみません……」
すぐに効くようにと、
首の動脈に針を刺した。
すると、驚くほど症状が引き、
荒い息も深呼吸が出来るまでに
治まってくる。
「オメガの発情をこんなふうに
止めるのは、次いつ来るのか
分からなくなるってリスクがあるから、
あんまりお勧めしないんだけど……」
今回は仕方ない。
蒲田さんは心配そうに言う。
岩橋くんはそれを防ぐために、
定期的に休養を取って
活動を続けて行くことを選んだのだ。
……しっかりと、
自身の性と向き合うために。
「すみません、今朝
抑制剤打つの忘れてしまって」
「そうなんだ。任せっきりに
しちゃってごめんね」
「いえ。私のミスなので……」