第3章 それぞれの葛藤
「あれ、岸くんだけですか?」
「あ、お疲れっす」
外から顔を覗かせたのは、
マネージャーの勝瀬さんだった。
新しく付いてもらってから
既に数ヶ月。
……だけど、俺はあんまり
話した事がない。
彼女は、スポーツドリンクが
大量に入ったカバンを抱えていた。
重そうにフラつく様子を見て、
たまらず声をかける。
「どしたんすかそれ。俺持ちますよ」
「え、悪いですよ!
メンバーさんへの差し入れなのに」
「いやいや!それだったら余計、
俺が持ちますって!」
取り上げるように軽々と、
2リットルのペットボトルが入った
それを持ち上げた。
「うわあ、岸くん凄いですね!
力持ちだ!」
「俺も一応、男なんで」
「ありがとうございます。
助かりました」