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溺愛執事の恋愛事情

第1章 神様ヘルプ!


寝巻きのままに立ち上がり、腕組みしながらベッドにちょこんと座る彼女を鋭く見下ろせば。


「さ、誘惑しに行くわよ」


彼女はさも嬉しそうに、クローゼットへと手を伸ばすのだ。


「…………」


こんな時間に掴む胃袋なんて、役にたつのか?
それ。
ため息を小さく吐き出しながら、にこやかに微笑む彼女には、逆らえるわけなどなく。
たぶんこれが、惚れた弱味、ってやつなんだとしたらほんと、厄介きまわりない。






「見てみて、ハイセ!」
「…………」
「朝ごはん、作ったの!」
「………夜中の、3時に?」
「仕方ないじゃないの。どのくらいかかるのかわからなくて、早めに作ったらさっき出来上がっちゃったんだもの」


キッチンの柱へと凭れながらぷくーっと膨れるその仕草、わざとやってるなら天才だな、うちのお嬢様は。


「この時間なら夜食ですね、お嬢様」
「え?そうなの?だって冷めないうちのがいいかと思ったんだもん」
「お一人で作ったのですか?」
「え?うん。ハイセには、敵わないけど」
「頂いても?」
「うん!もちろん!」


キッチンに備え付けられた、二人掛けのテーブルへと腰掛けて。「いただきます」、そう小さく呟く。


肉じゃがに、焼き魚、小鉢には何故か、卵焼き。
暖かい白いご飯に、やっぱり何故か、の、野菜スープ。
このメニューなら味噌汁だろう、とか突っ込みたくもなるけど。
それから。
このメニューなら朝じゃなくて夕食に食べたいくらいのボリュームだけど。

仕方ない。
お嬢様に一般常識、なるものはきっと存在しないのだ。



「…………ハイセ?」
「ええ、美味しいです」
「ほんとっ??」


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