第12章 溺愛執事の恋愛事情
そうだ。
ここから、始まったんだ。
彼女を俺のものにする。
気持ち全部奪うつもりで口説いて、口説いて口説きまくって。
気持ちいいことも教えて。
俺だけしか見えないように。
俺だけしかいない、って、知らしめるために。
全てはこの一言から。
「結婚、していただけますか」
「…………ハイセ」
『立場が違いすぎるわ。残念だけど諦めて』
あの時は玉砕覚悟で砕けた。
ただ、知って欲しくて。
この気持ちを。
『執事』以上の関係を作りたくて。
ただきっかけが欲しくて。
ただ。
それだけだった。
だけど。
「…………返事は?皇」
恭しく皇の手を取り、口付けた。
その手がぎゅ、と握り返されて。
顔を上げれば。
涙で目を真っ赤にして微笑む彼女がそこに、いた。
「はい、以外の言葉、許してくれるの?ハイセ」
「許すはずないでしょう?」
立ち上がり、彼女の涙ごと舐め取りキスをひとつ。
「結婚して、ハイセ」
「ええ、喜んで」
そのまま彼女を抱き抱えて腕の中へと閉じ込めれば。
友人、家族たちからの、歓声。
「こんな大それたサプライズ、初めてよ」
「俺を誰だと思ってるんです?」
「ハイセは世界一優秀なあたしの旦那さまね」
「…………そんなの」
当たり前。
そう、告げる前に。
「大好きよ、ハイセ」
飛んできたのは彼女の嬉しい直球ストレート。
「俺も愛してる」