第12章 溺愛執事の恋愛事情
あれから。
マスコミは『御曹司の黒い過去』から『イケメン御曹司の魅力』、なんて。
ダークな見出しから一気にきらびやかな見出しへと変わり。
ハイセの魅力とやらをこぞって書き立てた。
ハイセの魅力なんてわかるはずもない。
だってあれは、ハイセは。
あたしのものだもの。
あたしの前でこそその魅力とやらは最大限、いかされるのよ。
ハイセがこの国を去って。
本人不在の中マスコミも一気に熱が冷め、徐々に世論からは忘れられていき。
パパとハイセが危惧していたように、あたしに火の粉が飛ぶことはなかった。
もっとも。
あのふたりのことだからなんらかの力が働いていたのかもしれないけど。
今となってはもう、どうでもいい。
確認する術もないのだから。
ハイセがいなくなって。
3回目の、春。
「じゃぁパパ、ママ。━━━━━行ってきます!!」
ハイセがいなくなってふたりは日本へと拠点をうつし、できる限りそばにいてくれた。
ひとりじゃ広くて寒いこの屋敷も、家族がいれば暖かかったし、楽しかった。
だけどもう、おしまい。
あたしはこの家を今日、出ていく。
この2年とちょっと。
死ぬほど勉強して。
たくさんいろんなことを学んだ。
足手まといにならないように。
手助けが出来るように。
ずっとそれだけを考えて、生きてきたの。
たったひとりの、大好きな人。
会いたくて。
触れたくて。
抱き締めたくて。
「……………ぇ」
あい、たくて………。
「━━━━━━ッッ」
ああ駄目だな。
泣かないって、決めたのに。
やっぱりほら、駄目だった。
泣いたら見えないのに。
だから絶対、泣かないって決めてたのに。
「〰️〰️っ、」
「━━━━━━皇!!」
忘れるはずない。
ずっとずっと聞きたかった、大好きな声。
「…………はい、せ」
ハイセ。
ハイセだ。
ほんとに、ハイセだ。