第9章 ふたりの境界線
だけど。
途端に襲った嫌悪感。
吐き気。
恐怖。
「…………皇?」
「はい、せ……」
「ごめん、やりすぎた?」
「ち、が……っ、わかんない……」
わからないけど。
怖くて怖くて、震えが止まらない。
嫌悪感でさっきから吐き気が止まらない。
「ごめ……っ、ハイセ」
怖い。
わからない。
怖い。
ただ支配するのは恐怖、だけ。
「ハイセ………」
「大丈夫。ここにいます」
ぎゅ、って。
覆い被さるように抱き締める腕が暖かい。
こんなときでもハイセは、大事にしてくれる。
覆い被さるこの体勢でさえハイセは、あたしに重さを感じさせないから。
「大丈夫」
心地いい、声。
「少しおやすみ下さい」
トントン、て。
あやすように背中を叩かれれば。
先ほどの倦怠感も相まって。
すぐに睡魔が襲う。
「…………」
そのままあたしは、ハイセの腕の中でゆっくりと、目を閉じた。