第9章 ふたりの境界線
「………」
なんだ、これ。
わざと?
恥ずかしそうに視線を反らすその仕草も。
真っ赤に紅潮した頬も。
少しだけ潤んだその、瞳も。
すべてにおいて男を煽る最高の材料だ。
どこで覚えてくんのかな、このお嬢様は。
どんどん。
知らないところで確実に『女』に、なっていく。
「………お嬢様」
「うるさいっ、てば。なんにも知らないっ、言わないっ」
そ、と。
右手を頬へと伸ばす。
「ぇ」
面食らったように、大きめな瞳がさらにその面積を増やす。
「存じておりました」
「?」
「保健室では、あなたに触れたくて、抱きたくて。我慢出来なかったから……」
わざと。
皇の欲情を煽るように触れた。
視線を送った。
艶めかしく、声色を変えた。
全部全部、皇に、準備、して欲しくて。
「………っっ!?」
キョトン、と見開かれていたその大きな瞳はすぐに。
再度恥ずかしそうに真っ赤になって反らされる。
その、表情がみたくて。
恥ずかしがるこの子の仕草が、表情がこんなにも体を熱くする。
ほんとにかわいくてキレイで。
堪らない。
「こんなになるまで何を、思っていたのです?」
いじめたくなる。
「はい、せ……、や……っ」
広げた足の間へと体を滑り込ませ、捻挫した足を肩へと乗せる。
そのまま吸い付くような足へと舌を這わせた。
「あ……っ!?」
太ももへと舌を這わせ、唇で軽く吸い付けば。
簡単に所有の印が白い肌を飾っていく。
「………体、熱い」
「知ら、ない……っ」
両肘で自分の体を支えるその細い腕が、震えてる。
こんなことでさえ、体は反応してるのに。
ほんとに、強情とゆーかなんとゆーか。
「気持ち良くない?感じない?」
「だから……っ、知らないってば!!」
「………」
ひとまわりも下の高校生に。
何むきになってんだ、とかは思いつつも。
駄目だ。
入ってしまったスイッチは、取り消せない。
「素直になったら、やめてやる」
「………っ、は?」
「頑張って『耐えて』下さいね?」
「ちょ……っ、何……」