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溺愛執事の恋愛事情

第9章 ふたりの境界線





「さて、お嬢様」
「…………」
「いかがいたしましょうか」


「…………」





避難訓練も無事終わり、保健室へと戻ってきた先生の許可を得て。
そのまま帰宅と相成ったわけだけど。
いつもよりも1時間ほど早い帰宅時間。
屋敷のみんなはそれぞれ買い物やら休憩中やらで、誰ひとりとしていなくて。
もちろん冷静に考えればこれもきっとハイセの仕業に違いないのだろうけど。
今この瞬間、あたしにそんな冷静さなどあるわけもなく。
ただ組敷かれるままに上に跨がるハイセを見上げるしか出来てなかったんだ。




「………とりあえずそこ退いてくれるかしら」
「それは、無理ですね」
「なんで部屋に入るなりあたし、あんたに襲われてんの?」
「ああ、襲われてる自覚がおありでしたか。では、遠慮なく」
「ちょっと待って!!」


『遠慮なく』顔を近付けてくるハイセの顔に手を伸ばし、距離を取れば。


「なんです?」


不機嫌そうにあたしの両腕を引き剥がす。


「いかがいたしましょうか、ってことはあたしに決定権あるのよね?なら、退いてちょうだい」
「失礼いたしました。では訂正致します」
「無理!訂正なし!!」

はぁー、と、これまたわざとらしいため息を吐き出して。
ハイセはあたしの両腕を頭上でこれまた簡単に拘束する。


「ちょっと……っ」
「保健室で誘ってきたのはお嬢様でしょう?今さらやめろなんて、そんな小悪魔に育てた覚えありませんね」
「誘っ……!?」

ってゆーか育てられた覚えもありませんがね!?


「あんな顔しといて、ここまでお預けしてた僕は相当偉いと思いますが?」
「ちょっと待って和泉さま!?ぜんっぜん意味が理解出来ないのですか!?」
「ああ、いいですねそれ。『和泉さま』グッときた」
「はぁ?」

〰️首、舐めないでよっ


「ならこうしましょう」
「?」
「……濡れてなければ、僕は何も致しません。我慢します。」

「………」


パ、と拘束していた右手と、左手を上にあげるハイセ。
ああほんと、憎たらしいくらいに余裕たっぷりの笑顔。


「……濡れていたら、僕の好きにしてよろしいですか?」


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