第1章 神様ヘルプ!
「琲生」
後ろのドアから聞こえた低い声にふたりで振り向けば。
ちょうどドアから入ってきたパパはかたん、と自分の席へと腰かけた。
「もちろん、まだ手は出してないだろうな?」
「ええ、もちろんでございます、旦那様」
パパの言葉に、先ほど飲み干した水を吐き出しそうになるのを必死で耐えて。
手の甲で口元を押さえる。
が。
飄々と答えるハイセに、脳が理解を示す前に体は勝手に前へとそのまま突っ伏した。
「皇?」
「まぁ皇ちゃん、なぁに?食事中にはしたない」
「……………」
「お嬢様が卒業されるまでは、一歩も触れるつもりはございません」
「そうかそうか、それを聞いて安心したよ」
「もちろんでございます」
あっはっはっは
なんて。
豪快に笑っちゃってるパパの真横で、ハイセはあたしにしか気付かないように視線を向ける。
「………」
やっぱり絶対、性悪変態執事。
騙されてる。
ふたりともハイセに騙され慣れすぎてるわ。
神様助けて。
あたし絶対、好きになる人間違えてない?