第7章 お嬢様の涙
「これが、キスですよ」
ふわ、とした優しい口づけに、止まった涙がまた溢れる。
だけどそれでも、優しく表情を緩ませて。
唇を寄せるハイセに。
さらに涙が流れてくる。
あんなに気持ち悪かったのに。
怖かったのに。
全然、違う。
ふわふわして、気持ちよくて。
もっともっと、触れて欲しくなる。
ハイセが。
すごく愛しくて涙が止まらない。
優しさに。
ハイセの想いに、胸が熱くなる。
「大丈夫、だから……っ、ハイセ」
「……ええ」
ゆっくりと胸のボタンが外されて。
涙を追うように這わせていた唇が、首筋から、胸元まで下がってくる。
時々顔を上げながら、瞳を安心させるよう合わせると、にこりと優しく笑みを溢して。
ハイセはゆっくりと、身体へと触れていく。
目を閉じれば。
先ほどの恐怖で強張る身体。
怖くて。
目を開ければいつもすぐそばにハイセの優しく揺れる瞳が、あって。
すごく安心する。
ハイセに触れられたところが優しく、上書きされていく。
「閉じないで。俺を見て」
無意識にでもくっつく目元に唇を寄せて、甘く優しく、ハイセが囁けば。
不思議と恐怖が安心感へと変換される。
「大丈夫」
そう、何度も何度も。
優しく頭を撫でてくれるんだ。
「痛かったら、言って下さい。指、入れますね」
「………っ」
ゆっくりと、ゆっくりと。
下半身に感じる違和感。
だけどそれはすぐに、嫌悪感へと、置き換えられた。
「………や、だ。いやっ!!やだっ、止めてっやだっ」
怖い。
痛い。
苦しい。
嫌。
やだ。
「やだっ、いやぁっっ」