第4章 しがらみ *
「…………。」
「すまなかった、七神」
「俺が悪かった。だからこちらを向け」
「…………………。」
はぁ、と嘆息する。
湯に浸かりながら、むくれた顔をしている彼女。
「おまえは良くなかったのか?」
びく、と肩を震わせた彼女は、ようやくおもてを上げた。
「…………ったの」
「え?」
「恥ずかしかったの!」
おもてを隠そうとする掌は、指先を絡めて除けさせた。
ぽかぽかと身体を叩いてくる彼女を抱きしめる。
(おまえだけだ。
俺を喜ばせるのも、悲しませるのも………こんなにもかき乱すのも)
腕に閉じ込めたまま、思考に載せる。
額に唇で触れる。
腕に感じる温もりだけが、自分をここへ縛りつけるしがらみだった。