第4章 しがらみ *
鳥がさえずる声を、ぼんやりとした思考の奥でとらえる。
起き上がり、窓の外へと瞳を巡らせると 初夏の空は厚い雲を纏っていた。
まだ夜明け前なのだろう。
「(そうだ………私昨日、キラと………。)」
ふいに淫らな時間が思考をかすめ、ひとり頬に朱を散らした。
(もう………! 朝からなにを考えてるの)
熱くなった頬を押して、寝台から降りる。
(どうして、なにも言ってくれなかったの?
あなたがつらいとわかっていたら、私は………。)
彼女がみせた表情一つひとつを記憶から呼び寄せ
その裏に隠された想いを探す。
(っ………そういえば、)
今まで、彼女が弱さをみせたことは一度としてなかった。
なにかつらいことはないかと聞いても、柔らかに微笑ってこう呟くだけで………。
『姉さんに負けないくらい強くなって、私があなたの支えになってみせるから』
そう宣言するときのおもては、貼りついたような笑顔だった。