第23章 眠っていた力
『ふざけんな…てめぇっ!!』
悟浄がキレて僧侶に殴りかかろうとした時…
衣月が何か呟いているのが聞こえた…よく聞くと…お経のようなもの。
『まさか…』
三蔵は驚いたように衣月を見ている。
明らかに寝ているのに経を唱えていて経文が反応している。
『衣月…もしかして…この人の存在を否定して…消そうとしているっ!?衣月っ!!そんなのダメですよっ!!』
里白が気づいて叫んだ。
『どういうことだっ!?』
意味が分からないようで悟浄が言った。
『衣月が今、双肩にかけているのは無天経文です!!この僧侶の存在を消し去ろうとしてるんです!しかも…無意識に…おそらく、日常的に暴言を吐かれていたのでしょう…かなり限界だったのかもしれません…』
里白がなるべく落ち着いて説明をした。
『衣月っ!!起きろ!!衣月っ!!』
三蔵が声をかけても衣月は起きない。
寝たまま経を唱えている。
『チッ…おい、お前…今の聞いてただろ。このままお前が最初からこの世に居なかったことになりたいか?なりたくなければこの場で言え。即身仏になるという話は無かったことにすると。』
三蔵は僧侶を睨みつけながら言った。
『そ、そのような脅し文句が通用するとでも?』
焦ったように言う僧侶。
『嘘ではありませんよ。無天経文はそれが可能なんです。』
八戒が僧侶を睨みつけながら言った。
『わっ、わかった!!無しにする!無しにするからー!』
僧侶がそう言うと三蔵は衣月の唇を己の唇で塞いだ。
経文は光を放つのを少しづつやめていく。