第18章 悪木盗泉
『懐かしいねぇ〜』
『そうですね。』
今、来ている街は衣月と里白が会った街。
『随分、静かな街ですね。妙に落ち着くというか』
人通りもあるしなんの変哲もない街。
しかし、妙に静かなのだ。
八戒はその妙な静けさに違和感を感じた。
『妙に静かすぎて気持ちわりぃ…』
『確かに…なんか居心地いいもんじゃねぇよな…』
悟空と悟浄までもが言い始める。
『そうかぁ?俺はなんともないんだけどな…』
独角兕はそう答える。
『ここは戒めの街なんです。』
里白が悲しそうに言った。
『とりあえず、この街から出て今日は野宿しよう。早く出ないと大変な事になるかも。』
衣月は真面目な顔で言った時だった。
『おお!里白じゃねぇか…綺麗な坊さんと旅に出たって聞いたけどこの金髪の坊さんのことか?坊さんのくせに…俺らのお仲間とは…血なまぐさいやつだな?』
男が急に里白に話しかけてきた。
『違う。その人じゃない。それに、私はもう貴方とは関わらないと決めたんです。放っておいてください。』
里白は冷たく言い放った。
『良いじゃねぇか…また愛してやるよ…』
男はニヤニヤと里白に近づいて言った。
『里白、行くよ。あんたもさ、腹違いとはいえ、妹に手を出すとか馬鹿なの?やめなよ。』
衣月は男にそう言うと里白の手を引いてその場を去った。
訳が分からず、ほかの人々もついて行った。
しばらく何も言わずに進んでいくと街から離れた森の中に来ていた。
『衣月…あの街は…まさか…』
ずっと黙っていた三蔵が衣月に話しかけてきた。
『そうだよ。あの場所は楼央院を建てた初代の有天経文の守り人が作った街。三蔵が恒天城で見た書物の中にあったでしょ。北にある戒めの街。そこは生と在を司るものにより、命を与えられたって…初代の有天経文の守り人は実の兄を愛し、子を成したがその子は奪われ行方知れず。廃人となりかけたその者を寺へと預け、三蔵法師となった。』
衣月はそう言うとタバコに火をつけて煙を吐き出した。