第2章 背負った過去
同じ時間に衣月は窓際に座ってタバコを吹かしていた。
『寝れねぇのか?』
そんな衣月に三蔵が声をかけた。
『三蔵…起きてたんだ。』
『目が覚めた。』
三蔵はそう言うと起き上がってベットに座り、タバコに火をつける。
本当は起きていたのだが…
『あのさ…三蔵には話しておかないといけないなって思うことがあるんだ…』
『何をだ?』
『あたしさ…昔…金山寺に居たんだよね。男と偽って…その時に修行中の事故でお腹を強く打ったみたいで…処女にして…子宮が破裂…摘出するしかなかった…だから、あたしには来るものがこない…』
『そういえば…そんなことがあったな…それがお前だったのか…』
三蔵は複雑そうな顔をしていた。
『光明三蔵はあたしを女だって知ってたのに…多分、当時、江流だった三蔵にも言わなかったんだと思う。それからあたしは…先代のいる寺院に預けられた。あたしの立場が悪くなるのを恐れたのかもね…』
『飛仙(ひせん)だったな…あの頃は…』
三蔵はそう言いつつタバコを吹かした。
『うん…』
衣月はそう言うと短くなったタバコを灰皿に押し付けた。
三蔵は衣月の話で思い出した…
江流であった自分は年上の当時、飛仙と名乗っていた衣月に憧れとは違う何かを抱いていた。
今の衣月への想いがあの時と同じなのだ。
その気持ちを知ってか知らずか…光明は言った。
〖ねぇ、江流…もし、あなたが憧れとは違う何かを誰かに抱いたなら…大切にしなさい。女人禁制なんて言いますけど…好きになってしまったものはどうにも出来ませんからね。〗
この言葉を思い出して…
三蔵は気づいた。
自分は衣月を女として見ているのだと。