第5章 ゆるふわ
そんな表情をさせたい訳じゃない。
首領の為ならば、喜んで身命を賭す者が掃いて捨てるほど居る此の組織の中では、此方の勝手な愛慕や崇敬など、全て届くはずのないものと心得ている。責めて、触れることのできる快楽の中に、満足を求める程度は、許されたい。
中也の願望など知って知らずか、は中也の首筋に抱きついて、耳朶を舐める。其の快感に反応する自身が、彼女の中でビクビクと大きくなると、は気持ち良さそうに声を漏らした。
彼女の唾液で濡れた耳に触れる、喘ぎ混じりの吐息が、酷く艶かしく中也を襲う。押しつけられたの身体の重みでは足りずに、中也はの腰を押さえつけた。
「中也くん」
耳元で奏でられた声に、返事ともつかない言葉が口から溢れ出る。繋がった身体から押し寄せる快楽で、思考を巡らす余裕すらない。
「愛してるよ」
何の他念の入る余地もない中也の頭に、其の言葉は鳴り響く。そうやって心を捉えて、彼女は見えない鎖を付けていくのだ。絶対に此の手を離すまいと、中也はの胎内に欲望を垂れ流す。
全身が脈打つような恍惚を感じながら、中也はを強く抱きしめると、薄っすらと剥き出しの感情が芽吹いた。
絶対に離さない。此の命尽きるまで。
That's all.