第13章 おとぎのくにの 5
「養女になればカズの身分の問題が解決して、私たちは新しい家族を得ることが出来て、ジュンさまはカズと婚約出来て、誰にとっても良いことしかないでしょう?」
「本当にそうですね!私もそう思います!」
ウキウキしているお母さまに、私も全面的に同意する。
だって本当に良いことしかないじゃん!
盛り上がる私とお母さまの間で、カズは身の置き所がなさそうにしているけど。
困った顔をしてたってカズはとっても可愛い。
でもお父さまとお兄さまたちはそんな可愛いカズを見て、複雑そうな顔をしていた。
「何度も言うが、まだ決定ではない。カズが決めていいんだよ」
再び口を開いたお父さまは、カズに決断を委ねつつもやっぱりどこか断ってほしそうで。
「お父さまはどうして反対なさるんですか?!カズを養女にすることに何か問題でもあるんですか?!」
私の口調もついキツく問い詰めるようなものになってしまう。
だって私の大切なカズの幸せな未来が掛かってるんだもん!
例えお父さまでも返事次第では許さないんだから!
お父さまは私の剣幕にちょっとたじろいだけれど、今度は黙ってしまうことはなかった。
「反対しているわけではない。私だってカズのことを実の娘のように思っているのだから、養女にとして迎えることには何の異議もないよ。ただ…」
怒る私を宥めるように弁解してたけど、なんだか言い難いことでもあるのかちょっと言い淀んで。
「ただ?」
それでも逃がすまいと間髪入れずに聞き返したら
「ただ…まだ、サトもカズも嫁に出すなんて考えたくもないんだよ…」
お父さまは観念したようにこの話に乗り気ではない理由を白状してくれた。