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依存愛-彼と過ごした3000日-

第10章 『崩壊』する音 


『え、はな?』



携帯の向こうから聞こえる声は、掠れて寝ぼけた声。


「ごめん、優生、ここ開けて?」
『は?いま、どこ』
「玄関の、前」


『は?』


ガタンっ、て。
大きな音と、あとからガチャン、て、カギのあく音がして、玄関のドアがあいた。


「どーしたの、今、何時………」
「ごめん、優生」


今まで寝てただろう優生に抱きつくと、暖かい。


「眠れなくて」


あたりはまだ、薄暗い。
朝日も登りはじめてない、時間。


「どーしたの?」


「なんでも、ない」


「中、入る?」



あったかい体温に顔を擦りよせて、首だけ縦に動かした。




まだ真っ暗な寝室に入ると、ベッドがまだあったかい。


「ごめん、寝てたよ、ね」
「寝てた、けど。もー覚めた」
「ごめん」


当たり前だよね。

だってまだ、4時前。


普通、怒るよね。


「ごめん、なさい。迷惑かけて」
「花」
「ごめん」

「じゃ、なくて」


立ち上がりかけた私の腕を掴んだまま。


「花さっきから謝ってばっか」


引っ張られると、そのまま優生の腕の中にダイブする。

「……ごめん」

「たまに、あるよな、ひとりで寝るの寂しくなるの」
「ごめんなさい」
「寝る?」
「………………一緒に?」
「花が眠るまで、ちゃんと起きてるよ」


そのまま、一緒にベッドに寝転ぶと、布団をかけながら。
優しく腕枕をしてくれた。

「ちゃんといるから、寝ていいよ」
「……………………うん」


最低。
最低。


なにも聞かないで優しくしてくれる優生の顔が見れない。




しーちゃんのいなくなったあの部屋にいたくなくて。






誰かのあったかい温もりが欲しくて。
こんなに優しい優生に、甘えるなんて。


こんな時間に突然きた花を、優しく包んでくれる。


普通なら怒ってもいいのに。


なんでこんなに優しいの。



「………ありがとう、優生」


最低だ。
最低すぎて、嫌になる。


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