第9章 斎藤八雲~心霊探偵八雲~
ギュウッ
不意に腰回りに温もりを感じたと思い見てみるとが抱きついていた。
は大体危険な目に合わされたときぐらいしか甘えようとしない。
この間は頭を殴られて記憶が無くなりかけたからな。
とにかく、俺は彼女が甘えようとしない事がどっかの誰かさんとは違って楽だ、と思ってた。
そう、過去形。
この間、見てしまったんだ。誰か知らない男とが話していたのを。
その時の俺はどうでも良いと思っていたし、なんとも思っていなかった。
その時は。
ただ、思い出す度に何故か苛立ちを覚えあまり眠れなくなってしまった。
最近、彼女も訪ねて来ないし、寝ようにも寝られなくなってしまった。
これほどまでに彼女の事を考えることも無かったのになくても生きていけたものが最近俺の側にいて、そのどうでもよかったものが無くなると胸が苦しくなる。
彼女は、酸素みたいな存在だったんだな。