第2章 一戦を越えて
「あんなもの渡すなんてなに考えてるの!?」
ひよりはトイレから出るといち早く夜トへ質問を投げ掛ける。
夜トは学からの前金だろう、五円玉を手のひらで転がしていた。
息をあら立てて。
「あれは起爆剤だ。学には少し無茶をしてもらう。どうなるかはあいつ次第さ…」
夜トは首をさする。
今の夜トは誰が見ても不調と分かるほど、辛そうだった。
「オレはこんなだし…雪器は…使えねえし…」
夜トは、ズズ、と身体を引きずり、壁に持たれながら歩く。そして廊下の角を曲がった。
「夜トっ」
ひよりが角を曲がった時にはもう、そこには誰もいなかった。