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【HQ】ハイキューSS

第3章 赤葦、木兎の夏②


「赤葦ぃぃぃ!!!」
木兎さんの大声が響く。射的での戦利品を抱えて走り寄る木兎さんと、手ぶらの木葉さんを見れば何が起こったのかわかる。
「飲み物買ってくるね。京治のバーカ」

伝えるのと同時に駆けだす彼女を横目に、木兎さんが隣に立つ。木葉さんと軽く会話をした後2人で同じ方向に歩いて行ったのをみると、木葉さんも飲み物を買いにいったのだろう。
「男2人で花火って、どう思われるんでしょうね。皆さんは?」
「リンゴ飴も食いたいっていって並んでる。花より団子だからアイツら」
「木兎さんは違うんですか?」
「そりゃ可愛い彼女と大好きなセッターの方が優先だろ」
「どーも」
「可愛くないね・・」
木兎さんって、いつも美味しいところ持っていくんだよな。それは射的だけではない、バレーでもそうだ。
バレーに関してはエースだから当然だけれど。

「初めて、あなたに負けたくないと思いました」
チームメイトでエースでもある木兎さんにかける言葉ではないが、どうせ聞こえないのだから。祭りの喧騒と花火の音が後押しをしてくれた。
「知ってるよ」
何を知っているのか分からず、花火に照らされた木兎さんの横顔に視線を移した。
「赤葦、知ってるよ」
「聞こえたんですか?」
いつもの騒がしさが付きまとう笑顔とは違い、静かな笑顔で彼は言う。
「周りが煩くてもさ、隣の奴の声くらい聞こえるだろ」
木兎さんがヨーヨーを弄びながら、俺の腕に当ててくる。
2人ともやる事一緒なんだな。
「赤葦、お前結構頭よさそうでバカなところあるよな」
ずっとコンビを組んでいたこの人相手に、これ以上伝えることはない。ヨーヨーを手で払いながら視線を空に移した。


“毎年この日に気持ちの区切りをつけるんだ。今この瞬間は楽しい日々がまだまだ続くと思って、花火を見て別れた時から徐々に皆とのお別れに向けて準備する”

一瞬で消える花火を見つめれば、先輩の言葉を思い出す。
頬を撫でる涼しい風は真夏のソレとは違った。いつもと同じ日々が永遠と続くと思っていた季節は今日で終わりを迎える。これからの季節は徐々に何かが変わっていくのだろう。

季節は秋へと向かう。

ー終わりー
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