第36章 苦き夢と甘き現(徳川家康)※閲覧注意
政宗「ち・・・あいつは今頃、
人の饅頭で、
仲睦まじくやってんのか・・・」
政宗は舌打ちをしつつも、
満足げに自分の分の、
饅頭を食べていた。
自分の好きな女に、
自分以外の男が、
視線を送っていたことなど、
とうの昔に気づいていた。
それはほかの男たちもいっしょだっただろう。
だが肝心のその好きな女の視線が、
どこに向かっているかなど、
政宗もふくむ、
ほかの男たちは知らなかったはずだ。
だけど政宗は違う。
忍の視線の先に誰がいるかを、
こんな形で知ってしまった。
そして同時にあの瞬間、
すぐに理解してしまったのだ。
自分が好いていた女は、
その男を好きだった彼女であることに・・・
政宗「欲しいもんは逃したことねえ・・・
つもりだったんだけどな・・・」
幼き日に失った片目以来の喪失感を、
政宗は味わいながらも、
その心には不思議と充足感が芽生えるのだった。