第32章 兄の皮をかぶった狼(豊臣秀吉)
秀吉「(くっそ・・・
やっぱり俺は・・・)」
秀吉がうなだれた時だった。
忍「秀吉さんいるー?」
忍が勢いよく、
襖をあけて入ってきた。
秀吉「(こらちゃんと返事を待ってから、
入りなさいといつもって違う。
・・・なんて時に来るんだ)」
忍にだけは、
この姿を見られたくなかった。
いや光秀や政宗、
信長にも見られたくはないが、
忍に見られるのは、
本当にまずいとそう思った。
忍「秀吉さん・・・いない
・・・それに何、
このワンちゃん」
ワンちゃんとは、
おそらく自分のことだろうと、
秀吉はそう気づき、
慌てて逃げようとする。
忍「こら」
それより早く忍は、
秀吉を抱え上げた。
秀吉「(くっそ忍の力強い・・・
いや今は俺が弱いのか)」
忍「ダメだよ。
ここで暴れたら、
秀吉さんに怒られちゃうよ?」
秀吉「(俺がその秀吉なんだよ)」
秀吉は懸命に忍に、
訴えかけるが、
その声は忍には届かない。