第23章 翻弄する月(伊達政宗)
青葉城にある一室で、
忍は着替えをしていた。
青葉城の城主である伊達政宗の妻であるため、
本来なら一人で着替えたりなど、
しないものなのだろうが、
この時代ではなく、
五百年後の世界の人間、
である忍にとっては、
世話をやかれるのには、
いまだに慣れなかった。
忍「女中さんは姫様とか、
お部屋様っていうけど、
そういう柄じゃないのになぁ・・・」
安土城でしていたことを、
青葉城でしようとして止められたぐらいに、
青葉城での忍の扱いは、
丁寧すぎるくらいだった。
それこそ城主である政宗が、
「そいつの好きにさせろ」と言わなければ、
安土城でやっていた仕事は、
させてもらえなかったと思う。
もちろん危ないと判断すれば、
政宗とて止めるが、
好きなことをして好きなように笑う、
そんな忍を、
政宗は愛したからこそ、
自分の妻という立場のために、
彼女から好きなことや好きな笑顔を、
奪うのが嫌だったからである。
忍も快楽主義で自由奔放な政宗に、
よく振り回されるものの、
そんな彼のことが誰よりも好きだった。