第9章 しろくろ *中編*
見覚えある人を見かけて、こっそり付いていく。
鳴子の糸に気付いて回避。掛かった瞬間吊るす罠も回避。
「忍び慣れてますね、光秀さん」
「気配は佐助殿だったか」
「はい。俺でした」
何をしてるのかと聞いても、たぶん答えてはくれないだろう。大方、信玄さまの件を探りに来たんだと思うけど…。
「佐助殿は、たしか春日山に仕えていたな」
「はい」
「ここへは何用で参られた?」
「巡回警備の一貫、兼、実戦訓練という感じです」
「なるほど」
甲斐の虎は生きているのだな。と、光秀さんがニヤリと笑った。
「さぁ?」
「くくく。…佐助殿は嘘をつくのが下手らしい」
「では、白黒はっきりさせましょう」
「……ほぅ?」
「付いてきてください」