第1章 雨月に咲く ~prologue~
「幸村……」
「あ?なんだよ?」
「…………いや、いい」
「??」
紫陽花を見ながら考察を始めようとした所に茶々を入れられてイラッとしました、なんて言わない。いつか返す。
「それより、信玄さまに何か用事?」
「いや、大したことじゃないんだが、居ないと不便ってとこだな。検分書の改めとその報告をしようと思ったんだ」
「心当たりは?」
「ありすぎて手が回らねー」
ズレた気がした眼鏡の鼻当てを指で押し上げながら問いかけると、幸村は溜め息と共に項垂れる。どんまい。
「じゃあ、俺も探してみる。一番いそうな所は?」
こうして、俺たちの知らない信玄さまを探るイベントが始まった。