第1章 壁の外
「ねぇ、アラン。この壁の先に何があるか知ってる?」
「いや、わからない。」
一人の少女は分厚い本のページをさっとめくり、少年に見せるように指をさす。
「この世界の大半は"海"っていう塩水に覆われているんだって。」
「塩水?そりゃすごいな。」
「でしょ?…でも、きっとそれだけじゃない。」
本の記述によれば、そこには炎の水、氷の大地、砂の雪原が存在しており、少女の興味を煽った。
「この世界は私達が思っているよりもずっと広く、ずっと美しい。」
少女は遥か遠くの地平線を見つめ呟く。
少年はそんな少女を慈しむような瞳で見つめ、少女の柔らかい髪をそっと撫でる。
「…そうか。ソフィアが言うならきっとそうに違いない。」
「ねぇ、アラン。」
「どうした?」
「幸せだね。」
「…そうだな。」
その時、彼らは知らなかった。
50mにも及ぶ脅威が、すぐそこまで迫っていたことを。