第69章 ココロに触れたい

ベッドに押し倒されると、すぐさま口付けられた。


触れるだけの口付けは、次第に激しさを増して熱い舌を割り入れられる。


「んっ、はぁ......だめ......」

逃れようとしても、器用に絡まされて頭が沸騰しそうだ。
どうして......こんなこと？


両手を頭上で掴またまま、身動きが取れない。
そのまま逃げられないように、身体を密着させられる。


「ふぁ......んっ......」

「はぁ......キス好きなの？」

「んっ、だって......」

キスが好きなのかは分からないけど、増長さんが好きだから。

脳内処理は追いつかないし、忘れていた感覚を思い出すみたいに自然に舌が彼の舌に絡む。

お互いの吐息が熱くてーー
身体全部が心臓になったみたいだ。


大好きな体温、香りに包まれて......クラクラする。
チュッと唇が離れると離れ難いみたいに銀糸が二人を結んだ。

『このまま流されちゃえ』
そんな悪魔の囁きが聞こえるけどーー


「こ、こんなのだめです......」

でも、気持ちがあやふやなままで......流されるのはダメだ。
何より彼の為にならない。

足を動かしてどうにか逃れようとする。


「気持ち良さそうだったのに、どうして？」

こちらを見下ろす彼は疑問顔だ。


「それに、俺達はきっと......初めてじゃないよね？」

「えっ？」

「婚約者ならこういうことしてたんだよね？昔の俺はどんな風に君に触れたの？」

「んっ......そんなの知らな......」

首筋に温かい舌が触れて身体が熱い。


「ここには？どんな風に触れた？」

「んっ......」

胸の輪郭を撫でると服の中に手が入ってきた。


「だめ......離してください」

「帰さないって言ったよね？」

「いや......」

恥ずかしいとかそういうこと以前に......胸が痛い。