【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第32章 Angel's smile
夜叉丸さんと彼女の写真を見た日、私の運命は変わった。
いや『正常に戻った。』と言う方が正しいと思う。
彼の言った通りで、私は元より彼側の人間だったようだ。
その日、すぐに篤志さんと修二さんの元へ行き話を聞いた。
篤志さんと私が知っている情報でつばさちゃんの父親が事件に関与していないことは知っていた。
二人は私がしようとしていることを全て知っていて、応援してくれている。
それから、すぐに『Mimi』として歌手活動をすることにした。
「私を利用してください。私なら彼らより夜叉丸さんの力になれますよ。」
そう彼に交渉したと思う。
『もう戻れないわよ。』
その言葉が印象的だった。
私への注目は事務所への注目にもなる。
所属タレントへの仕事も次第に増えて、間接的にガンダーラに圧力をかけていたと思う。
その上で彼らを利用しないことを約束してもらった。
つばさちゃんのことは、問題が解決するまで側で守る計画だった。
彼の妹......彼女は天才だった。
デビューしてからは『天使の声』で話題になり、瞬く間にスターの階段を駆け登っていく。
そんな中、有名作詞家『さいかい ゆう』が彼女の為に歌を書いた。彼はつばさちゃんの父親だ。
それは月曜日のドラマの主題歌に決まっていた。
歌手としてこの上ない程名誉な事だ。
でも、その歌はドラマのヒロインに渡った。
元々身体が弱いのに無理をして歌手を続けていた彼女は、間も無く自ら命を絶った......。
彼女に私が出会ったのは幼い頃に出た、とある歌のオーディションだった。
私と年は離れていたが、それを抜きにしても彼女の才能はずば抜けていた。
今までレッスンを受けて来たであろう参加者達の中でも、一際輝いていた。
勿論、選ばれたのは彼女。その後メジャーデビューをした。
「なまえちゃん、あなたは天才ね!」
彼女からそう褒めてもらったのをよく覚えている。
私はレッスンなど受けた事はなかった。
勿体ないと、個人的に会いに来てくれては彼女がレッスンをしてくれていた。
私の恩人。
歌をもっと好きになった理由で、歌を歌わなくなった理由だった。
彼女がこの世から居なくなった。
その日から私は歌うことを辞めた。
誰にも触れて欲しくなかった。
だから、心の奥深くにしまい込んでいた......。
