【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第30章 近くて遠い
「剛士くん、スタジオに行く約束でしたよね?」
少し前から、なまえの様子がおかしい......。
「確かに言ったけど、連日だぞ。お前しんどくないのかよ?また、来週でもいいだろ。」
「善は急げですよ。今週、根を詰めてやりたいんです。剛士くんの可能な限りで、お願いします!」
これまでに、舞台の仕事などで歌うことがあった。
直前には入り浸りで練習に付き合わせることもあったけど、直近そういう仕事は入ってない。
歌の指導も今までは一緒に歌って、
「素敵です。」
「上手です。」
ところが、最近は様子がおかしい。
「今のビブラート素敵も素敵ですけどこの音からかけだしたらもっと良くなると思います。あと切ない感情を表している......ここの歌詞ですね。ここはもっと細かくかけるといいと思います。あとここの箇所なんですけど息の量をもう少し減らしてもいいかもしれません」
なまえは基本的にぶっ飛んでる部分があるが、歌と音に対しては誠実だ。その中でも遊びの心がある。歌の表現は人それぞれで、こういった歌に関しての感性の違いは勉強になる。
「あとパターンを相談されましたよね。抑揚のつけ方が、ここを一番盛り上げるように歌うパターンの方が良いかなと思います。」
「なまえ、今日も行っちゃうの?」
「えー!ごうちんばっかりズルいよ。」
「ごめんなさい。剛士くん借りますね。」
「なまえチャンは、金さんと本当に仲良いよね!」
「お二人はいつもギターを演奏しているんですか?」
「私はギターは弾けなくて、歌を聴かせてもらってるんです。」
「そうだ。客観的な意見は参考になるからな。」
「なるほどな、興味深い。」
「でも、剛士は澄空さんには頼まないよね?彼女も音感は優れてるけど。」
「確かにな。どうして澄空じゃなく、なまえなんだ?」
コイツら、ほんっとに詮索するのが好きだな。
「剛士はなまえが大好きだからね。」
「そうそう!だから、ごうちんはなまえちゃんにお願いしてるんじゃないの?」
「ははっ、確かに剛士はなまえを大切にしてるね。」
「それは、僕たちみんなだけどね?確かに剛士は分かりやすいかも。」
なんか、言いたい放題言われてる。
けど、コイツが歌上手いことをバラすわけにはいかねぇし。