【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第74章 必要な犠牲
「あの、お時間をいただけませんか?」
山城さんに切り出したのは数日前のことだった。
「なまえちゃん、お疲れさま」
「夜叉丸さん、お疲れさまです!」
「今日、行ってくるのね?」
「はい......」
「逐一報告してちょうだいね......絶対に無理はしない。アタシに約束しなさい」
その日待ち合わせ場所で待っていたのはーー
勿論、山城 隼。
「夢みたいだね。Mimiちゃんとデートができるなんて!」
「すみません。お待たせしました!」
さりげなく手を繋がれるけど、スキャンダルとか気にしないのかな?
今日の目的はいうまでもない。
隙を伺ってあのデータを取り返すこと。
大丈夫、悟られないように落ち着いて......。
「今度、雑誌の取材でおすすめのお店を聞かれるそうで......山城さんなら詳しいと思いまして!今日はお時間を作っていただき、ありがとうございます」
「いつでも誘ってよ!それじゃあ行こうか」
さり気なく腰を抱かれるけど、我慢、我慢だ。
「はぁ......」
鏡の前で盛大なため息をついた。
バッグは絶対に席には置いていかないし、いちいちガードが固い。
映画中に寝てくれることを期待して座席は一番後ろの端っこ。
つまらないと評判の映画も見に行った。
でも、無理だった。
ホテルでのディナー。
今もその隙は無さそうだ。
他に何か......?
テーブルに戻ると、グラスに手を添えた。
「そういえば、オーディション終わりましたね。お疲れさまでした!」
「うん、そうだね」
不機嫌そうな顔に期待が高まる。
この様子だと......彼は選ばれていないのかな?
私自身はその様子を見ない約束だった。
一回は事務所にお願いしたわけだし、山城さんや他の俳優さんも参加する。
もし私が不公平な判定をしたら、彼らの努力が報われないからだろう。
お店の外に出れば辺りは真っ暗。
「まだ時間は大丈夫?」
「はい、大丈夫です!!」
今日はあの写真を取り返すまでは帰れない。
二度目のチャンスはきっとない!
何度も誘えばそれこそ怪しまれるだろう。
考えつく手段なんて、もう一つしかなくて......。
逃げたいと思う?
大丈夫......。
彼の顔が浮かんだら『引き返せない』と思った。