【B-PROJECT】(完結)あなたの瞳に永遠を誓います
第73章 変わったもの、変わらないもの
「撫でてみます?」
「えっ!」
思った通り、増長さんは驚いている。
そうだよね。
「子犬が苦手なことは知ってるので、大丈夫ですよ!撮影に呼ばれるワンちゃんなら人には慣れてるし。上から撫でると怖がるので、目線を合わせて見える位置から......」
その子が私の手にすり寄ってきた。
「動物って優しい人が分かるって言うから......」
彼の手がそっと小さな身体に触れて、その手からは緊張が感じられる。
「大丈夫、大丈夫......」
次第に緊張がとけていくのが分かると、思わず口元が緩んだ。
すごい進歩だ!
「触れた......!」
「ふふっ、この子も気持ち良さそうです」
子犬は目を閉じて、増長さんの手に擦り寄っている。
その子をひとしきり撫でると、目が合って微笑んでくれた。
「こんな風に触れる日がくるなんて......ありがとう!」
自然にされたハイタッチ。
その手を受け止めるけど、思ったより強い衝撃に身体が後ろに傾く。
「きゃっ!」
「わっ!」
ーードサッ
あっ、倒れちゃった。
芝生の上は、ふかふかで気持ち良い。
都会だってことを忘れそうなくらい穏やかな時間だ。
「大丈夫?頭うってない?」
見上げると、覆い被さるみたいな増長さんと目が合った。
「はい、大丈夫です!」
前にも、こんなことがあったよね。
MooNsの部屋でのクリスマスの夜。
今はこの距離が心臓に悪いのに、前はもっと近くに居たんだ。
どれだけポーカーフェイスを気取っても、心臓の音は隠せない。
それは......壊れるくらいうるさく響いていた。
今思えば、夢のような時間。
好きなだけ彼に触れて、抱きしめられる。
あんな幸福は......きっと二度とこない。
今、この距離に居ることは奇跡だろう。
きっと......これが最後。