愛のカタチ~貴方と見る世界~【ONE PIECE】
第1章 プロローグ
「「知らない?!全く?」」
シャンクスとベックマンは声を揃えて言った。
「シャンクスが知りたいことは、私には答えられないと思う。知らないもの。おかあさまは、あまりそういうこと話してくれなかったから。」
「それなら、知ってることを話してくれ。」
シャンクスは、ベックマンと共にリンの前に座った。
「おとうさまのことは、前に一度だけ聞いたことがある。とても愛していたけど、自分からおとうさまの元を去ったって。だから、おとうさまは、私のことを知らないと。」
幼いながらも、母に恐る恐る聞いた、父親のこと。
その時の母の悲しそうな、切なそうな、でもどこか愛しくて懐かしそうな表情は、今でも忘れられない。
「それじゃあ、分からねぇのも無理はないな…」
ボソッと呟かれたその言葉にシャンクスのため息が混じった。
「でも、おとうさまは元海賊だった人だと言ってたよ。それは教えてくれたわ。とても強くて、おかあさまのことを助けてくれたって。なんとかって呼ばれてたみたいだけど…忘れちゃった。あとね、おかあさまには弟がいるんだって。それしか知らない。」
「はぁっ?!元海賊だっただと?!」
二人の目が見開かれた。自分たちの知っている海賊だったりしないだろうかと、二人はそれぞれに、当てはまりそうな男を思い浮かべた。
(リンは今12だろ…てことは、12年前にはもう既に海賊をやめてるヤツ…?!)
そう思いながらシャンクスは、手で口を覆った。おそらく、ベックマンも同じことを思ったに違いない。
シャンクスの頭の中で、浮かんでくる、リンの父親かもしれない元海賊の名前。思い当たるヤツらが何人もいて、シャンクスはゾッとして眩暈がした。悪名高く、凶悪で残忍な元海賊もいるからだ。
(考えるな…頭痛くなる…)
─1年後。シャンクスとベックマンはリンのことをシャボンディ諸島に連れていく。そこで船を降りたリンを、シャンクスは再び船に乗せようと何度も説得を試みるも、頑なに拒否される。やがて彼女への説得を諦め、再び新世界へと航海を始めた。
リンのビブルカードをシャンクスが預かり、シャンクスのビブルカードをリンが預かって。何かあった時のためにと、赤髪海賊団へと繋がる、電伝虫も彼女に持たせて。
それから彼女はシャボンディ諸島で暮らした。