第23章 ありえないもん
るな「 食事にお薬を乗せたりとか 、車椅子にベルトで…… 紐で手すりに結ぶとか、ベッド柵に紐を……手足をなんてありえないもん」
和也「うん……」
るな「脳梗塞とかで片側に麻痺が残っても、動く方の手でお年寄りは上手く服のボタンを止めたり、おしぼりだって巻く事が出来るの。出来ない所を介護者が手伝うの」
和也「出来ない事を『一人でやらせろ』とかありえないよな」
るな「出来ない事をするという事は、時間が掛かるという事なの。なのに『早くしなさいよ』とかお年寄りに 矛盾した事を言うなんてありえないもん」
和也「るなちゃん、そして翔ちゃんに『 早くさせなさいよ』 『そんな事に時間掛かけてるんじゃないわよ』とかさ。種橋《たねはし》は、二人を目の敵にして……俺が、勤め初めた時から『ありえません』って種橋に言い続けていたからね。るなちゃんと、翔ちゃんの事を庇う言動をした時から感情的になってさ。絶対自分のイライラを二人にぶつけてたんだ……ゴメンね」
るな「カズくんは悪くないもん!」
和也「他の職員達も種橋に右ならえで。皆でお年寄りに酷い態度に言動をしてさ赦せねんだよっ! 会社の……イヤ、俺達の意見なんて聞く耳を持たないでっ」
こんな矛盾に一番抵抗したかったのは……お年寄りだったんだ