第9章 現世編(後編)
それにしても、随分太く大きい斬魄刀だ。個々の霊力に応じて大きさを変える斬魄刀があんな大きく、収める鞘すらない姿は初めて見た。ゆうりは腰に下げていた己の斬魄刀から手を引く。助太刀は必要が無いと感じる程の戦いっぷりだったからだ。一護は圧倒的な力で虚の腕を、脚を斬り捨てる。ヤケになった虚が彼に飛びかかった。
「ウチの連中に手ェ上げた罪を思い知れサカナ面!!」
斬魄刀が虚の仮面を縦に割った。仮面を壊された化け物は最後の悲鳴を上げ、粒子となり消えていく。流石は一心の息子だと思った。死神としての才能はその辺の隊士より余程有りそうに感じる。彼は、ふぅっ、と思い切り息を吐き出した刹那、ぐらりと身体が前のめりに傾く。ゆうりは咄嗟に屋根から降りると倒れる彼の身体を支えた。風で外套のフードが背中へ落ち、顕になったゆうりの姿にルキアは驚く。一護は疲労からかまるで意識を失うかの様に眠っている。
「ゆうり…来ていたのか。」
「うん…ルキアの霊圧が小さくなっていったから不安で見に来たの。けど…」
ゆうりは腕の中で思い切り眠る一護に視線を落とす。彼がこんな形で死神になるとは全く思ってもみなかった。何より死神の力を譲渡する事は尸魂界において重罪となる。
「まぁとにかく無事で良かったよ。まずは全員怪我を治すわ。」
「すまぬ…その外套は、霊圧を遮断させるのか?近くに来ている事すら分からなかった。」
「まぁね、流石に鬼道を使ってしまったら隠し切れないけれど…ここまで来て何もせず帰るなんて嫌だから。」
死神の力を奪われてしまったルキアは今の己の姿を改めて見直す。死覇装とは正反対の着物、破道を使えるのかすら危うい霊力…勿論斬魄刀である袖白雪も手元から消えてしまった。まるで流魂街にいた頃を彷彿とさせる無力さに顔を歪める。そんな彼女へゆうりは回道を用いて肩の傷を癒していく。
「…本当は傷を治すだけじゃなくて死神に戻してあげたいんだけど一護の霊圧が高過ぎて回帰能力使っても私の力で戻せるかどうか…。」
「いや、構わぬ。これは私の不祥事だ。しかしこれからどうしたものか…というか、ゆうりは此奴を知っていたのか?」
「あ、うん。今高校通ってて、一護は同じクラスの友達なの。」