第7章 死神編【後編】
夢を見た。居なくなった皆が死神として戻って来て、昔と同じように過ごす幸せな夢。けれどきっとこれはただの私の願望でしか無くて。叶える事は難しいと分かっているからこそ夢を見たのだろう。
窓から入る日差しに目を覚ます。視界に飛び込んで来たのはいつか見た、見覚えのある真っ白な天井だ。昨日、風邪で倒れた私はギンに四番隊へ運ばれたんだっけ。点滴は既に終わったのか外されている。
ぼんやりとした頭で昨日の事を思い出す。熱はすっかり下がったようで特段怠さも無い。ふと顔を横に向けゆうりは驚愕した。テーブルに沢山寄せられたフルーツやお酒、お菓子にぬいぐるみ。…一体何だこれは。
「…元気になったら一緒に飲みましょ、乱菊……これ、みんなお見舞い…?」
酒瓶のラベルに書かれた文字を指先で伝い読み上げる。その他置かれたものの中には小さなメッセージカードが挟まれているものも多々あった。
「…ふふ、ただの風邪なのに。」
浮竹、海燕、雛森に阿散井、阿近、蟹沢、青鹿…藍染まである。それ以外にも最早顔も分からぬ隊士達からも花を添えられていた。まさか、自分がこんなにも沢山の仲間に心配されるとは思ってもみなくて。自然と眦に涙が浮かんだ。
「……幸せ、だなぁ。」
生きていた頃、こんな幸福に思えた事があっただろうか。…否、無い。なんて恵まれた環境だろう。なんて幸福なのだろう。周りから与えられる優しさが心に染み入る。
膝を抱え、零れた涙が真っ白なシーツを濡らす。丁度その時、部屋の扉が開く。顔を出したのは白哉だ。彼はまず部屋に置かれた見舞いの品に驚き、次に涙を浮かべて顔を上げたゆうりに驚いた。
「これは……見舞いの品か。何故泣いているのだ。体調がまだ優れぬか?」
「あ…お、おはよう白哉。これはちょっと…皆がわざわここに来てくれたのが嬉しくて。」
「…そうか。」
死覇装の袖で目元を拭う。立ち上がろうと身体を起こしたゆうりの肩を白哉はトンと軽く押しベッドへと戻した。彼女はキョトンとした顔で彼を見上げる。
「…もう大丈夫だよ?」
「暫く休め。1人休んだところで支障はない。」
「でも…。」
「命令だ。」
「……はーい。」