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恋に落ちて 〜織田信長〜

第70章 あの頃の気持ち



「信長様……、」

「何だ?やめては聞いてやれんぞ?」

「言いません。でもあの…明日は逢瀬に連れて行ってもらえませんか?できれば、初めて逢瀬に出かけた時みたいに変装して…」

「どうした急に?」

「何だか、あの頃の私達に会いたくて…ダメですか?」

過去に縛られるのは好きじゃないから、ダメかな…?

「構わん、俺も久しぶりに貴様の町娘姿を見たくなった」

「ふふっ、もう娘ではないですけどね」

「そうだな」

チュッと、掠めるだけのキス。

「貴様は俺の妻で、吉法師の母で、何よりも大切な俺の愛しい女だ」

「っ……もう、その言葉は反則ですっ!」

その言葉に感動して泣いた私を見て、信長様は泣き虫だと笑った。

時には見失い間違えてしまう私をあなたの大きな愛が助けて包んでくれるから、その度に私は信長様の深い愛を感じてもっと信長様を好きになる。


私たちはその後も何度も愛を囁き体を重ね合い、すれ違っていた日々を埋め合った。





そして次の日、私たちは待ち合わせをして逢瀬へと出かけた。

変装はいとも簡単に見破られてしまったけど、それもまた笑い話として私たちの記憶に残るだろう。


「わぁっ!久しぶりに来ましたけど、湖、綺麗ですね」

「そうだな」

敷物を敷いて腰を下ろすと、信長様はゴロンと横になって私の膝に頭を置いた。

「ふふっ、初めて来た日もこうやって膝枕したんですよ?」

「覚えておる。あの日の貴様は、嬉しそうな中に寂しさを隠し持っておった」

「やっぱり、気付いてたんですね」

あの頃は、信長様との身分の違いや考え方の違いが気になって、言いようのない不安に駆られていたから…

「あの日も今も、俺は貴様しか見ていないからな」

自慢げに言うと信長様は目を閉じた。

サラサラと風が吹いて信長様の前髪を揺らす。

(本当に綺麗な顔…)

閉じた目に揺れる長いまつ毛に見惚れながら、私は信長様に口づける。

「何度言わせる?口づけはこうするんだ」

パチっと目を開けた信長様はお決まりの言葉を言って私の頭を押さえると、口づけを深いものへと変えて行く。

ずっとこんな風に過ごして行けます様にと、あの頃の私は願った。そしてその気持ちは今も変わらない。


何年経っても愛を囁いて愛してくれる信長様に、私は永遠に恋をする。


この先もずっと…






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