第5章 覚醒
はぁ、はぁと、お互いの呼吸が聞こえる。
信長様は私の肩に顔を埋めるようにして呼吸をしている。
やっぱり、手が自然に伸びて、信長様の髪を撫でる。
(どうしよう。嬉しくても涙が出る)
涙を流しながら、何度も、何度も、確かめるように信長様の髪を撫でる。
「アヤ、観念しろ。貴様は俺に惚れてる」
「..............っ」
慌てて、信長様の髪から手を引っ込める。
代わりに、信長様の手が私の頬を捕らえた。
「俺も、貴様に惚れておる」
(えっ?)
「貴様はすでに俺の物だが、貴様の口から聞きたい。その身も心も、俺の物だと言え」
「なっ........」
(なんて、なんて、こんな時まで俺様な人なんだろう)
思えば、今まで散々振り回されて来て、疑われて来て、急に好きだからお前も好きと言えって言われたって、はいそうですかって訳には行かない。
「言いたくありません。信長様には屈しないって言ったはずです」
ツーンっと、顔を背けて言い放つ。
(信長様だってちょっとは困ればいい)
「ふっ、それでこそ、俺の惚れた女だ」
ぐいっと、顔を信長様の方に向かせられた。
「アヤ、夜はまだ長い。貴様の口から言いたくなるまで、とことん付き合ってやる」
「えっ、うそっ!」
慌てる私の顔を、嬉しそうに見て笑う信長様の悪戯な笑顔を合図に、
私の長い夜が今夜も始まった。