第3章 🐾2
降谷零side
おかしい。
あの玄関でのやり取りの後、5時間はたったがひと1人出てこない。
念の為この家の周りを見てみたが玄関以外に外に繋がる道はない。
まさか……隠し通路?!
ありえない話ではない。こんな豪邸で頭と呼ばれる男。何かしら関係があるに違いない。
少し聞き込みをしてみるか。
するとラッキーなことに買い物帰りの婦人が歩いてきた。
「すみません。少しいいですか?」
「?えぇ。なんでしょう?」
声をかけると婦人は足を止めてくれた。目は僕に見惚れているようだった。
「この屋敷の人ってどんな人なんです?」
「え?あぁ、ここの人。怖い人達に見えるでしょ?でもいい人たちなのよ。老人を助けたり捜し物を見つけてくださったり。頭って呼ばれてる人がいるんだけどこれまたイケメンでね!この間なんか家でたくさん採れたからってお野菜をわけてくださったわ!」
嬉しそうに答える婦人。
表向きはいい人ってことか。裏はどうなっているのだろうな?
「そうなんですか。変な噂とか聞いたことないですか?」
「んー。そうね。なんでも大きな犬をかってるみたいよ?昔の話なんだけどね、この家前までは年老いた人が頭って呼ばれてたの。その頭って人はひと1人乗って走れるんじゃないかってほどの大きな犬を連れてたって噂があるわ。そんな犬私は見たことないけれどね。」
「ありがとうございます。あぁ、あれでしたら荷物お持ちしますよ。」
「あら?じゃぁお願いするわ!」
婦人の荷物を受け取って婦人について行く。その間、屋敷のことについて色々聞いた。
分かったことは、今の頭は彼であること、悪いことをしている噂はないこと、少人数の人があの家に住んでいること、大きな犬をかっているらしいこと……ぐらいか。
大きな犬……。
昨日みた大きな狼を思い出す。
人が1人乗れるぐらいといったらあの大きさぐらいの犬だろうか。にしてもあの狼は幻想的だった。