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君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】

第10章 trill


その晩は、二人して裸で抱き合って眠った。

セックスはしないって決めたものの、肌と肌がピッタリと密着すれば、やっぱりそれなりに緊張はするわけで…

櫻井さんの寝息が首筋を掠める度、
櫻井さんの指が俺の頬を滑る度、

心臓がぶっ壊れそうにドキドキと脈打った。

なのに、不思議と“そういう気”は起きてこなかった。

ただ好きな人に…櫻井さんの腕に抱かれて眠れるだけで、それだけで幸せだった。

「眠れないの?」

いつまでも寝付けずにいる俺の髪を、櫻井さんの指が梳く。

『櫻井さんは? 寝ないの?』

見上げた先で、櫻井さんが小さく笑って、俺の額にキスをした。

「何て言ったら良いのかな…、勿体ない…って言ったら良いのかな…」

『勿体ない? 何が?』

「考えても見てごらん? 大好きな人が自分の腕の中にいるんだよ? 勿体なくて眠れると思う?」

『はは、それはそうかもね?』

俺の髪を撫でていた指が頬を包んで、俺達の唇が重なる。

お互いの熱を直接感じるような、深いキスなんかじゃなくて良い…、触れるだけで十分櫻井さんを感じられる。

「あ、そうだ…」

『何…?』

「そろそろその“櫻井さん”っての、止めにしない?」

『でも…』

「画数、多くて大変だろ?」

『ああ、確かに(笑)』

スマホなら一発で変換してくれるから、そう不便は感じたことはないけど、“書く”となるとそれは別問題。

ついつい面倒臭くなってしまうことも、ないわけじゃない。

でも、

『じゃあ何て…?』

「だから、これからは“翔”って呼んでくれて良いから…。俺も君のこと“智”って呼ぶし…。どうかな?」

『うん、それでも良いよ』

俺が笑うと、櫻井さん…いや、翔さんは凄く嬉しそうに顔を綻ばせて…

それから俺をギュッと両腕で抱き締めると、耳元に口を寄せた。

「好きだよ、智…」

『俺もだよ、翔さん…』

声にならない言葉を口にして、俺達はその日何度目…いや、何十回目になるか分からないキスをした。
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