君の声が聞きたくて 〜Your voice〜【気象系BL】
第12章 sostenuto
「それを僕に預かれ、って?」
うんうん、と頷いて見せる俺に、おじさんは首を傾げると、髭なんて生えてない顎を指で撫でた。
「うーん…でも、ミスター櫻井ならすぐ帰って来ると思うよ?」
え…?
「ハンバーガーをね、買いに行くって出てったから」
ハンバーガーって…?
潤さんの話では熱があるって言ってたけど…、俺が思ってる程でもない…ってこと…?
「良かったら中で待ってくかい?」
いい…の…?
「そんな汗だくで…暑かったでしょ? ほら、アイス上げるからおいで」
アイスって…、俺は子供かよ…
とは言え、ここで待っていても仕方ないし、翔さんにも会いたいし…
俺は管理人さんの言葉に、ありがたく甘えることにした。
想像してたより広い管理人室には、冷蔵庫やキッチン、簡単なソファセットなんかもあって、なかなかの快適空間だ。
おじさんはソファの片隅にチョコんと座った俺に、
「ユー、どれが良い? 好きなの選んじゃいなよ」
そう言って冷凍庫のドアを開けて見せた。
俺はギッシリ詰まったアイスの中から、カップに入ったチョコのアイスを選んだ。
ちなみにおじさんはバニラ(笑)
「ユー、櫻井君の友達かい?」
本当は“恋人”って言いたいところだけど、俺のことはともかくとして、翔さんが偏見の目で見られるのが嫌で、“うん”と答えた。
それにしても…
さっきからずっと気になってたけど、“ユー”って呼ぶのは口癖なんだろうか?
ま、どっちにしても面白いおじさんだ(笑)
どことなく父ちゃんにも似てる気がするし…
カチカチだったアイスも徐々に溶け始めた頃、、エントランスに設置された防犯カメラの映像がモニターに映し出された。
「お、櫻井さんがお帰りのようだよ?」
おじさんの言葉に、俺は残っていたアイスを一気に口に掻き込んだ。
アイスの冷たさに、ちょっとだけこめかみの辺りがキンとなった。
「また遊びにおいで」
『ありがとうございました』
俺はおじさんに礼を言うと、重いコンビニ袋を手に下げ、管理人室を飛び出した。